ホットな話題となっているBattlecry/雄叫びの処理順序について解説していきます。
まず、Battlecry/雄叫びとはミニオンカードのカードテキストで設定される"Keyword"アビリティのひとつです。このキーワードそのものはTaunt/挑発やWindfury/疾風のように特定の能力を示すものではなく、Hand(手札)からミニオンをゲームボード上にプレイすることでBattlecry/雄叫びの後ろに記述されるテキストの効果を発動させるトリガーアビリティです。
参照リンク: Abilities [gamepedia wiki]
ミニオン召喚とBattlecry/雄叫びの処理順序
話題となっているのはこのBattlecry/雄叫びがゲーム上で処理される順番についてプレイヤーの多くが誤った認識をしているということです。話の発端はわたしたちが普段気にも留めないようなHearthstoneのゲーム処理について実験し解説しているHearthstone Scienceの動画から始まりました。
この動画において解説されているのは、Battlecry/雄叫びアビリティを持つミニオンを手札からプレイしてミニオンがBattlefield/戦場に置かれた後にBattlecry/雄叫びのエフェクトが発動する、という内容です。
参照リンク: Battlecries Resolve AFTER The Minion Enters Play [Youtube]
この処理順序については、これまで多くのプレイヤーがBattlecry/雄叫びのエフェクトが発動した後にミニオンがBattlefield/戦場に置かれると認識していました。動画の序盤ではこの誤った認識は一般的なものなのか、そして実際にどのような影響があるのかを著名な配信プレイヤーを例に挙げて解説しています。
◆ [Team SoloMid] Trumpの例:
Mill Rogueと対戦しているTrump。手札がすでに9枚存在している状況で《Dr. Boom / ドクター・ブーム》をプレイした場合、相手のRogueが《Vanish / 退散》を使用したらBoomをプレイして8枚になった手札にはボード上の《Silver Hand Recruit / シルバーハンド新兵》と《Boom Bot / ブームロボ》が優先して戻され《Dr. Boom / ドクター・ブーム》が破壊されると考えています。
(補足)手札が10枚を超える場合に何らかの手段で手札に追加されるカードは破壊される。
参照リンク: Dr.Boom enters play before his Boom Bots [Youtube]
しかし正解は、《Dr. Boom / ドクター・ブーム》が最初に戻され手札に収まらなかった《Boom Bot / ブームロボ》が破壊されます。
◆ [Archon] Amazの例:
Paladinと対戦しているAmazはミニオンプレイを①《Dr. Boom / ドクター・ブーム》、②《Mad Scientist / マッドサイエンティスト》の順番で選択しました。
この順番を逆にすると、もし相手が《Equality / 平等》&《Consecration / 聖別》のコンボによってボードワイプした場合、《Mad Scientist / マッドサイエンティスト》のDeathrattle/断末魔エフェクトによって設置された《Duplicate / 複製》が《Boom Bot / ブームロボ》を複製してしまうと考えたためです。
参照リンク: Dr.Boom enters play before his Boom Bots [Youtube]
しかしAmazの想像とは異なり、①《Mad Scientist / マッドサイエンティスト》、②《Dr. Boom / ドクター・ブーム》の順番でプレイすれば、ゲーム上で処理されるミニオンの順番はMad Scientist→Dr. Boom→Boom Botとなるため《Duplicate / 複製》によって複製されるのは《Dr. Boom / ドクター・ブーム》となります。
ここまでのまとめ
処理順序: 手札からミニオンをプレイ→Battlefield/戦場に設置→Battlecry/雄叫びエフェクトの発動Battlecry/雄叫びエフェクトによってミニオンが設置された場合は、手札からプレイしたミニオンの後に順番が設定されると覚えておきましょう。
ミニオンプレイの処理順序
さて個別のカード処理についてはここまでの理解で十分ですが、手札からミニオンをプレイする際にはプレイヤーには見えないところで幾つもの段階が存在し、プレイされたカードの処理が全て終了する前に他のカードのエフェクト効果が割り込むことがあります。動画の冒頭で提示されたシチュエーションを例に解説しましょう。
参照リンク: Twilight Drake Dies Before Battlecry [Youtube]
手札から《Twilight Drake / トワイライト・ドレイク》をプレイ
《Twilight Drake / トワイライト・ドレイク》がボードに置かれる(この時点でBattlecry未発動のためヘルス1)
《Illidan Stormrage / イリダン・ストームレイジ》のエフェクト発動
《Flame of Azzinoth / アズィノスの炎》が1体召喚
《Knife Juggler / ナイフ・ジャグラー》がナイフを飛ばす、《Imp Gang Boss / インプ・ギャングのボス》にヒット
《Imp Gang Boss / インプ・ギャングのボス》のエフェクトにより《Imp / インプ》が召喚される
《Knife Juggler / ナイフ・ジャグラー》がナイフを飛ばす、《Twilight Drake / トワイライト・ドレイク》にヒット
「雄叫び: 自分の手札1枚ごとに体力+1を得る。」が発動前だったため《Twilight Drake / トワイライト・ドレイク》が破壊される
このような状況が発生するのは、手札から《Twilight Drake / トワイライト・ドレイク》をプレイした時カードテキストのBattlecry/雄叫びが発動する前に、Battlefield/戦場にミニオンが設置されたことによって《Illidan Stormrage / イリダン・ストームレイジ》のカードテキストに書かれた「Whenever you play a card, summon a 2/1 Flame of Azzinoth.」が処理されるからです。
参照リンク: 'Playing a minion' Sequence [Youtube]
1) The minion enters Play
手札からミニオンをプレイする
2) On Play Phase
ボード上にプレイしたミニオンが設置された段階。ここではミニオンのボード設置をトリガーとするアビリティのカードが反応する。
ex) 《Hobgoblin / ホブゴブリン》 《Illidan Stormrage / イリダン・ストームレイジ》
3) Battlecry Phase
1でプレイされたミニオンのBattlecry/雄叫びエフェクト発動
4) After Play Phase
1のミニオンプレイをトリガーとするアビリティのカードが反応する。
ex) 《Mirror Entity / 鏡の住民》 《Snipe / 狙撃》 《Sacred Trial / 聖なる試練》 《Rumbling Elemental / 轟きのエレメンタル》
5) After Summon Phase
1のミニオンプレイによってミニオンが設置された後に起動するトリガーのカードが反応する。
ex) 《Knife Juggler / ナイフ・ジャグラー》 《Ship's Cannon / 艦載砲》 《Sword of Justice / ソード・オブ・ジャスティス》
例えば《SI:7 Agent / SI:7諜報員》のCombo/コンボエフェクトによって破壊された《Mad Scientist / マッドサイエンティスト》がDeathrattle/断末魔エフェクトによって《Mirror Entity / 鏡の住民》を設置し、《SI:7 Agent / SI:7諜報員》をコピーするシチュエーション。
1) The minion enters Play
SI7をプレイ
2) On Play Phase
SI7をボードに設置
3) Battlecry Phase
ComboによってScientistにダメージ2、Scientistを破壊
ScientistのDeathrattle発動
DeathrattleエフェクトによってMirror Entityが設置される
4) After Play Phase
SI7がコピーされる
For Science!
知っている人にとっては当たり前のことじゃないかと思うようなことでも、意外なほどに多くのプレイヤー達の認識を改めるような秘密がこのゲームには数多く存在します。興味が湧いた方はHearthstone Scienceがアップロードしている他の動画や、海外WikiのAdvanced rulebookページをチェックしてみましょう。また機会があったらこのサイトでもご紹介していきたいと思います。
参照リンク: Hearthstone Science [Youtube]
参照リンク: Advanced rulebook [gamepedia wiki]
詳しいルールシリーズ目次 [ふらふらHearthstone]