メタブレイカーとして期待されるReno Mageの秘密にズームイン。
なぜいま再びReno Mageなのか
慌ただしい年の瀬をみなさまいかがお過ごしでしょうか。2016年もまもなく終わりを迎え、これが年内最後の記事更新になろうかと思います。今年も当ブログをご愛顧いただき誠にありがとうございました。好き勝手に興味持ったことを書き連ねてるだけのサイトですが、何かしらお役に立つことがあったなら幸いです。
さて、今年最後となる記事のテーマはReno Mageです。ガジェッツァン実装直後は数多くプレイされていたものの、Jade Druidの圧力に屈してメジャーデッキの末席にぎりぎりしがみついてるのがやっとという状況でした。
その後Aggro ShamanとMiracle Rogueを中心としてメタゲームが風向きを変えたところへ、このReno Mageがふたたび注目を集めています。このデッキを使用しラダーで成功したプレイヤーの報告が相次ぎ、Vicious Syndicateの「vS Data Reper Report」においても注目株に挙げられています。
しかしこのデッキに対して懐疑的な声も少なくありません。RenoデッキとなればどうしてもRenolockやReno Priestと比較されてしまうからでしょう。Warlockは言うまでもなくヒーローパワーという最大の武器を持ちますし、Priestは今回のエクスパンションで優秀なカードがこれでもかと追加され、おま国ヒーローのティランダ実装も相まってプレイヤーの興味を惹きつけています。Mageだけいまいちパッとしない印象は否めません。旧環境の人気デッキだったTempo Mageもほとんど変化が見られず、このクラスそのものがプレイヤーからの支持を失っているように感じられます。
端的に言えば、なぜいまReno Mageが注目されているのかよく判らん、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回の記事はReno Mageがふたたび注目を集め始めた理由に迫り、このデッキに秘められた力を解き明かしていきたいと思います。
人気デッキの変遷とメタの中のReno Mage
vS Data Reaper Report #31 [Vicious Syndicate]
新カード追加が引き起こす渦潮はいやおうなくプレイヤー達を新たなメタゲームへと引きずり込みます。デッキの人気などというものは高波に揺れる小舟のように頼りなく、旧環境で向かうところ敵無しだったMidrange Shamanすら例外ではありませんでした。プレイヤーから支持されるデッキは目まぐるしく日々入れ替わり、新たな構築アイデアを思うままに試していた今月初旬を過ぎる頃には、現環境の力関係もおぼろげながら輪郭を現してきています。
予想を裏切る海賊団の台頭、期待を上回る活躍を見せた《カザカス / Kazakus》および新生Renoデッキ、順当な成功を収めたJade系カードと新たなアーキタイプ、生まれてきた意味を見出だせないグライミー・グーンズ。既存の構築と新要素が溶け合って新たな環境を醸成し、代わり映えしない旧環境に飽き飽きしていたプレイヤー達に対戦の熱を取り戻してくれました。
さてガジェッツァン実装から数日経つと徐々に影を薄くしていったReno Mageでしたが、メタゲームの変化によってラダーの環境が追い風へと転じたことにより、いま再び評価されるようになりました。このデッキを苦しめていた無限に《翡翠のゴーレム / Jade Golem》を召喚するJade DruidはAggro ShamanとMiracle Rogueに追い落とされプレイヤーの支持を失っています。
ラダーでプレイされるデッキ相性の観点に立つと、Pirate Warriorすら蹴散らし環境の頂点にたったAggro Shaman、それに続くRenolockとのマッチアップ相性が良好であることこそ、Reno Mageが見直されつつある要因だと考えられます。付け加えてPirate Warriorに対して有利をとり、《隠蔽 / Conceal》中のミニオンを処理する手段を持つためMiracle Rogueとの相性は悪くはなく、ラダーで勢いのあるデッキのほとんどに五分以上で戦うことができます。
さてReno Mageはいったいどのようにして、現環境で最もパワフルなふたつのデッキと互角以上に戦えるのでしょうか。
◆ vs Aggro Shaman
ControlデッキがAggroデッキに対して勝つためには攻めを凌いで生き残り、相手のリソースを消耗させることが基本にして王道となります。Renoデッキにおいてはヒーローのヘルス値というリソースを全回復させる《レノ・ジャクソン / Reno Jackson》が最も効果的に作用するカードであり、ウィンコンディションそのものとなる場合もあるほどです。ただしこのカード1枚で勝てるほどAggro Shamanは楽な相手ではありません。
《トンネル・トログ / Tunnel Trogg》をはじめとして《トーテム・ゴーレム / Totem Golem》・《炎まとう無貌のもの / Flamewreathed Faceless》など強力なミニオンと優秀なウェポンカード、各種ダメージスペルによるバーストを持つAggro Shamanの猛攻から生き延びるのは容易なことではないのです。
Reno Mageにはこの強力な攻めをさばくのに都合の良いカードが幾つも備わっています。相手の行動を1ターンスキップする凍結/Freezeのメカニックと強力なAoEはAggro Shamanのリソースを効率良くすり減らしていきます。
◆ vs Renolock
Renolockは一見すると不利な相性にも見えます。何しろ同型の構築ですしRenolockは手札に不自由しません。相手もヘルスを全回復する《レノ・ジャクソン / Reno Jackson》を持ちながら、手札を幾らでも補充できるのです。
Controlデッキ同士のマッチアップは余りにも複雑なカードプレイの分岐が迷路のように広がっていますが、最終的な出口となるウィンコンディションはほぼ決まっており、そのひとつとして現在のRenolockは《リロイ・ジェンキンス / Leeroy Jenkins》のカードコンボによるバーストダメージを主要な武器にしています。Mageには《アイスブロック / Ice Block》が存在するためこのコンボによって瞬殺されることを防止できます。
リソースの勝負となればWarlockにはご存知《ロード・ジャラクサス / Lord Jaraxxus》というカードがあり、毎ターンたった2マナで召喚される《焦熱の悪鬼 / Infernal》は途切れることのない脅威の存在です。ただしその代償としてヘルスが15まで減少し、その数値はMageにとってスペルだけで撃ち殺すに足る射程圏内です。
Warlock側もそれを当然承知のためヘルスが15前後にまで低下することを警戒します。ヘルスが危険水域に達したと見れば《レノ・ジャクソン / Reno Jackson》を使うでしょう。そこへ再びRenolockを追い詰めるために、Reno Mage定番の一枚である《アレクストラーザ / Alexstrasza》の出番がやってきます。
カードプレイはチェスの如く
Reno Mageというデッキは採用されるカードが密接な関連性を持ち、そのポテンシャルを引き出すためにプレイングの習熟が必要と言われます。さながらチェスのように何手も先まで読んだプレイが勝ち筋へとつながり、カードの切り方ひとつがチェスの駒を動かすようにプレイヤーの思考を試します。絡み合った自分と相手の手番を紐解き正しくチェックメイトへと至るには、テキストに書かれている内容以上にカードへの理解を深めることが求められるでしょう。
ダイレクトダメージスペル
ダメージスペルの性質は幾つにも分類できます。大まかにはターゲット型のダメージスペル、RNGに依存する無作意対象のダメージ、範囲ダメージ(AoE)、そしてそれぞれには相手ヒーローが対象に含まれるか、相手ミニオンだけが対象となるか、または味方ミニオンや自分のヒーローまで被害を被るかという対象指定と効果範囲の違いがあります。
例えば《フレイムストライク / Flamestrike》のような相手ミニオンにしかダメージが入らないスペルは深く悩む必要はありません。その使い所に慎重になればいいだけです。相手ミニオンを除去する以外に用途が無いカードです。
Reno Mageにおいて難しいのは、ターゲット指定型かつ相手ヒーローも対象となるカードです。《フロストボルト / Frostbolt》・《忘れ去られた松明 / Forgotten Torch》・《ファイアーボール / Fireball》、これらのカードを正しくプレイすることがReno Mageの最も肝心なポイントかもしれません。
たとえばAggroデッキに対しては相手ミニオンの除去へ積極的にこれらのダイレクトダメージスペルを消費しても問題は無いでしょう。カードの価値を比べっこするゲーム後半へと生き延びることが出来れば、Aggro相手に絶対的に有利であるからです。
しかしその他のデッキに対しては、これらのカードがReno Mageのウィンコンディションに深く影響してきます。ダイレクトダメージスペルは挑発/Tauntの壁を飛び越えるダメージ源であり、呪文ダメージ/Spell Damage+アビリティとの連携や《アイスランス / Ice Lance》などのコンボによって相手のヘルスを吹き飛ばすバーストダメージとなります。
特にJade Druidのようなカードバリューで絶対に勝てない相手へ王手を指すには、相手の盤面がこちらを飲み込む前にヘルスを0まで削るというか細い道を進むしかありません。またコントロールデッキ同士のマッチアップにおいても、1ターンにプレイ可能なダメージスペルの可能性が相手を縛る見えない縄となります。カードが1枚ずつしか入らないReno Mageが《フロストボルト / Frostbolt》を浪費してしまったならば、Renolockは《アイスランス / Ice Lance》による追加の4点をひとまず警戒せずに済むようになるのです。
もちろん《山の巨人 / Mountain Giant》に直接殴られるような状況ではカードの出し惜しみが敗北へ繋がるので、自分のヘルスというリソースと現在の使用可能マナ、その後にプレイ可能となる手札の状況から総合的にカードプレイを選択します。
Hearthstone: Reno Mage - Supersode 3 [Youtube]
たとえば2ターン目のTrumpの状況では順当な選択肢が3つあります。
- ① 《フロストボルト / Frostbolt》で《ちんけなバッカニーア / Small-Time Buccaneer》を処理
- ② 《ファイアブラスト / Fireblast》で《海賊パッチーズ / Patches the Pirate》を処理
- ③ 《ファイアブラスト / Fireblast》を2ターン連続で使用し《ちんけなバッカニーア / Small-Time Buccaneer》を処理
Rogue側はヒーローパワーでウェポンを装備可能なので、何もしなかった場合は返しのターンに《ちんけなバッカニーア / Small-Time Buccaneer》がbuff効果を受けます。ここで《フロストボルト / Frostbolt》を消費すれば3点のダメージを未然に防ぐことはできますが、Trumpは②番の選択肢を選びました。翌ターンに《忘れ去られた松明 / Forgotten Torch》で処理にあたり、《フロストボルト / Frostbolt》の温存をヒーローのヘルス値よりも優先させたのです。
このように自分の手札とヒーローのヘルスを天秤にかけつつ、相手の行動と予測される未来の展開を考慮した上でプレイングの決定を図ることは、カードが1枚ずつしか入らないこのデッキならば尚更シビアに考えなければなりません。
Reno Mageの新要素
ガジェッツァン実装によってにわかに注目を浴びたReno Mageですが、ご承知のように一年前のLOE実装時から存在するデッキです。優秀なスペルが数多く存在しカード選択の幅も広いこのクラスはハイランダーデッキのコンセプトに適しており、Brian Kibler氏など著名な人物含めて一部のプレイヤーから愛好されてきました。
細々とプレイされてきたこのデッキがメジャーデッキへと駆け上がる原動力となった新要素をチェックしておきましょう。
◆ 《カザカス / Kazakus》
Mage・Priest・Warlockのトライクラスカードであるこのミニオンは今回のエクスパンションで最も評価を受けた1枚です。非常に強力な効果を持ち、多少RNGに依存するものの自分で効果を選択する自由度を備えています。《カザカス / Kazakus》自身が他のミニオンと連携可能なことも見逃せません。テンポとバリューのどちらでも必要なシチュエーションで求める要素を選択できる汎用性は、Reno Mageの人気を高める最も大きな要因となっています。
このミニオンは必要に迫られれば4マナで使用することもできますし、遅いマッチアップではより貪欲なプレイを選択することもできます。すなわち他のカードとの連携がこのカードの価値を最大限に引き出すものであり、Reno Mageにおいては《ブラン・ブロンズビアード / Brann Bronzebeard》と《ハイ!なソウルキャスター / Manic Soulcaster》の2枚です。
バリューを求めるコンビネーションの理想は3枚を同時に使用する10マナのプレイです。合計4回ポーション作成が可能となりますが、複製された《カザカス / Kazakus》を1枚デッキからドローしておく必要があります。
もし状況に応じて必要であれば、7マナで《カザカス / Kazakus》と《ハイ!なソウルキャスター / Manic Soulcaster》を同時に使用し、その後に複製した《カザカス / Kazakus》を《ブラン・ブロンズビアード / Brann Bronzebeard》と同時に使用することもできます。
◆ 《彫師ソリア / Inkmaster Solia》
《カザカス / Kazakus》と同様に使用条件が限定されたクラス専用の新たなレジェンドミニオン。正直なところ、このカードの評価はさほどでもありません。仮に挑発/Tauntでも付いていたならば、AoEと併せてAggroに対処する外せない存在となったでしょう。5/5のミニオンを置くテンポプレイと同時にスペルを使用する適切なタイミングを図るのは思いのほか難しいものです。
このミニオンの最も優れた点は10マナを使用できる以前のターンに10マナのスペルを使用できることです。つまり《カザカス / Kazakus》で生成した10マナポーションの効果をより早いターンに発動可能なわけですが、《カザカス / Kazakus》を他のカードと連携させるタイミングとの兼ね合いもあり、テンポバリューへと繋げることはこれもまた難易度が高いものです。
◆ 《ハイ!なソウルキャスター / Manic Soulcaster》
思いのほか用途が広かった新カード。カードの価値を重視する場合は先述のように、《カザカス / Kazakus》を複製することで莫大なバリューの獲得を期待できます。
Aggroとのマッチアップのようにカードバリューを欲張る必要が無ければコピー対象は広げて考えることもでき、《レノ・ジャクソン / Reno Jackson》含む回復アビリティを持つミニオンやAoE効果の《黄昏の鎚の招炎師 / Twilight Flamecaller》などがその対象となります。また、必要に応じて3ターン目のドロップとしてテンポプレイを行う可能性もあります。
Renolockとのマッチアップでは自分のヒーローのヘルスをリソースとして考え、このカードのプレイを慎重に選択する必要があります。ヘルスリソースが潤沢ならばカードバリューを優先できますが、相手のミニオンによるアタックで削られている場合は《レノ・ジャクソン / Reno Jackson》の複製を選択肢に入れなければなりません。カードコンボによるバーストダメージを《アイスブロック / Ice Block》で防いだとしても、体力を回復できなければ追撃で沈むからです。
◆ 《火山ポーション / Volcanic Potion》
この新カードはゲーム序盤のAoEとして非常に有効に機能しています。大きく評価される理由には海賊/Pirateが活躍していることも一役買っているでしょう。《ちんけなバッカニーア / Small-Time Buccaneer》&《海賊パッチーズ / Patches the Pirate》に対する最高の解答となります。
その他のキーカードとウィンコンディション
カードコンボで多大なバリューを獲得する《ブラン・ブロンズビアード / Brann Bronzebeard》、Aggroやコンボデッキのバーストダメージによって押し切られるのを防ぐ《アイスブロック / Ice Block》、攻守を兼ねる《アレクストラーザ / Alexstrasza》などの既存カードも現在のReno Mageの人気を支えています。
そして同時にこれら古くから存在するカードの選択が勝ち筋へ影響を与える比重も大きく、ゲーム後半へ向けたプレイングの判断にも関わってきます。それでは記事の締めくくりとして、ただいま支持を集めているReno Mageのデッキバリエーションをチェックしていきましょう。
デッキバリエーション
Reno Mageのデッキにおいて異なるカード選択が見られるのは《精神支配技士 / Mind Control Tech》のようなテックカードや挑発/Tauntミニオン、そしてゲーム後半の強力なカードコンボの存在です。Dragon Reno Mageのように種族シナジーを取り込む特殊なケースもありますが、カードコンボによってどのようにウィンコンディションを切り開くことを目指した構築なのかがデッキの個性として際立つ部分となっています。
◆ MSoGスタンダード
ガジェッツァン実装直後に完成されたこの構築は対戦相手のカードリソースをすり減らすことに特化しており、Aggroのカウンターに最適な形としていまだに人気を博しています。アグレッシブなデッキとの対戦がマッチアップの大半を占めるならば、自身のヒーローが生き延びることに注力することが勝率へと直結するでしょう。
Aggro以外のマッチアップを考慮する場合はゲーム後半のオプションとして《大魔術師アントニダス / Archmage Antonidas》や《炎の王ラグナロス / Ragnaros the Firelord》を採用するデッキも多く見られます。
◆ 雄叫び/Battlecry
Lifecoachの構築は雄叫び/Battlecryというキーワードアビリティに着目し、アグレッシブなデッキに対してよりリアクティブな構成となっています。当然《ブラン・ブロンズビアード / Brann Bronzebeard》のプレイの幅が広がっており、AoEから体力回復、テンポの獲得までさまざまに対応可能な点が注目されています。
◆ カードサイクル偏重 & バーストコンボ
For all those who wanted it. I peaked at top 10, going keep going for 1 today. pic.twitter.com/QQk3e93Y4n
— Rage (@Rage_HS) 2016年12月24日
最近注目を集めたRageの構築はカードドローのミニオンに加え、《ローニン / Rhonin》+《大魔術師アントニダス / Archmage Antonidas》、《彫師ソリア / Inkmaster Solia》+《パイロブラスト / Pyroblast》などのバーストコンボが大量に積み込まれています。
Freeze Mageのようにダメージスペルによるコンボで相手のヘルスを詰める可能性を持つことは、Reno Mageが他クラスのRenoデッキと比較して抜きん出ている特色といえるでしょう。他にもDragonシナジーや《頽廃させしものン=ゾス / N'Zoth, the Corruptor》を採用した断末魔/Deathrattle構成など様々なバリエーションが存在し、メタゲームの変化に合わせて今後も柔軟に対処していけるならば、このデッキは今しばらくMageクラスを代表する存在であり続けるはずです。