原題「Warcraft」、または「Warcraft: The Beginning」
参照リンク:映画『ウォークラフト』日本語公式サイト
7月1日より映画「ウォークラフト」が日本国内の封切りを迎えました。ゲーム世界を映像化したハリウッドの話題作として、または本格的なファンタジースペクタクルとして世界的に注目を集めている本作。往年のWarcraftファンのみならず、スピンオフ作品であるハースストーンのプレイヤーにとっても親近感を覚えるものでしょう。
当サイト管理人もさっそく劇場へと足を運び映画を鑑賞してまいりました。RTSタイトルの金字塔「Warcraft3」からBlizzard社のファンになったわたしの個人的な感想も交えて、本作の紹介とレビューを書いていきます。
【重点事項】
この記事では公式サイトに載せられていない映画のストーリーラインを直接明かすようなネタバレは極力避けておりますが、われわれがよく知るキャラクターと映画の登場人物の関係性については頻繁に言及しています。またなにぶんにも、今作はWarcraft世界の過去に起きた出来事を映像化した作品であるため、ストーリー展開のヒントになるような記述が含まれていることについてもご了承ください。
Index
▼ 「ウォークラフト」の短評
▼ 映画の予備知識
▼ 登場するキャラクター
▼ 参照リンク
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「ウォークラフト」の短評
- 全体の雰囲気
- 映像表現
- 作品の構成
- 原作の再現度
重厚に表現されたファンタジー世界。種族戦争というテーマを通じて、そこに登場する種族とキャラクター達の背景、抑圧された人々の悲哀や生き延びるために戦う者達の葛藤を緻密に描き、アクションとロマンスの要素を備えたエンターテイメント作品です。何よりもまず、全編を通じて盛り込まれた数多くのアクション要素は非常に迫力があります。カンフーアクションのように浮ついた殺陣はほとんど無く、剣と魔法のファンタジー世界を制するのは筋肉だと言わんばかりにマッチョイズムが強調されているのも特徴的です。
最先端の技術を駆使した映像は圧巻の一言。現実に存在する役者とCG映像との境界を意識させることなく、Warcraftというスケールの巨大な世界観を描き出すことに成功しています。アゼロス世界の人々が暮らす街並み、雄大な自然、そしてアライアンスとホードの大軍が激突する映像の迫力によって、観客は鼻面を掴まれるように物語へ没頭していきます。同時に細かいところまで造りこまれており、現実には存在しないはずのオーク種族(Orc)がまるで目の前に居るかのような息づかいを感じさせ、表情の変化は内面の心理まで窺わせるほど豊かで優れています。
この作品は特定の人物の視点に基いて構成されたストーリーではありません。異なる種族の生存を賭けた戦争、その動乱を懸命に闘いぬく人々にスポットを当てた群像劇として描かれています。
数多くの登場人物とさまざまな出来事が息をつく間も無いほどに詰め込まれており、観客が登場人物達に感情移入したりストーリー展開の緩急を楽しむ余裕はほとんどありません。ストーリー構成としての評価では少々不格好に映るも、原作の存在する映画化作品としては完成されています。この観点では個々の観客がどれほどWarcraft世界に精通しているかによって情報量が異なり、あるいは事前情報をまったく持たずに観るほうがファンタジー映画として素直に楽しめるかもしれません。
素晴らしいバランス感覚によってゲームの世界観とストーリーを二時間の映画として収めています。今作の本筋に直接関係しない事柄は大胆に切り抜き、あるいは変更されていますが、長年のWarcraftファンとして違和感を憶えることはさほど多くはありません。
(または、Warcraftファンにとって設定の変更や後付けは慣れっこなことだからかもしれませんが)
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映画の予備知識
この映画は海外のゲーム制作会社としてよく知られるブリザード・エンターテイメント社 (Blizzard Entertainment) の代表作、「Warcraft」シリーズの第一作目を映像化した作品です。1994年からリアルタイムストラテジーゲームの「Warcraft」はⅠ・Ⅱ・Ⅲの3タイトルと拡張版が複数制作され、その後シリーズで最も有名なMMO RPGの「World of Warcraft」がサービスを開始しました。
余談ですがこのハリウッド映画化は「World of Warcraft」のプレイヤーが全世界で1000万アカウント以上存在し人気のピークを迎えていた2009年に始まり、制作が難航したため2013年の再発表まで頓挫していました。往年のWarcraftファン達はなかば諦めぎみで長年待ち続けていたため、映画が公開まで漕ぎ着けたことをいまだに信じられない気持ちで眺めているかもしれません。わたしもその一人です。そして、この日本でも上映されていることを心から喜ばしく思います。
さて、Warcraftシリーズの主な舞台となるのはアゼロス(Azeroth)と呼ばれる世界です。ここではヒューマンやエルフ、ドワーフ、トロルなどファンタジー世界でお馴染みの様々な種族が暮らしています。種族間の軋轢は存在するものの、この世界に暮らす人々はおおむね平和を尊び暮らしていました。
そこへ突如現れ人々を襲い始めたのが緑色の肌と巨大な体躯を誇るオークの軍勢です。映画『ウォークラフト』ではアゼロスの住人と異世界から出現した侵略者であるオーク達の初めての邂逅から始まり、アライアンスとホードの勢力が雌雄を決する最初の戦争「The First War」の終結までを描いています。
二つの勢力
Warcraftシリーズ最大の特徴といえば、二つの勢力それぞれの視点をプレイヤーが経験することでしょう。語り草となっているように、この世界観では侵略者であるオーク達も単純な絶対悪ではなく、彼らにも生きるために戦わなければならない理由があります。
今回の映画でもWarcraftシリーズを貫くこのテーマが重視されており、アゼロスへ攻め込むオーク達は暴力的でありながら同時に戦士の誇りを持つこと、そして彼らが新天地を目指さなければならない理由を観客は知ることになります。MMO RPGの「World of Warcraft」を経験している人はどちらかに肩入れしてしまうかもしれませんが、基本的に観客は俯瞰した立場でこの戦争を眺めていくことになるでしょう。
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登場するキャラクター
映画に登場するキャラクター達の背景とキャスティングについては公式サイト上でざっくりと紹介されています。ハースストーンプレイヤーにとって見慣れた名前は《グルダン / Gul'dan》と《カドガー / Khadgar》、《メディヴ / Medivh》ぐらいしか見当たらないでしょう。この映画の原作である「Warcraft」第一作目の最初の戦争が勃発したのは、わたし達がよく知るキャラクター達が活躍する時代から遡って約40年ほど昔のことだからです。
この項ではハースストーンにも登場するキャラクターと映画の登場人物の関係について簡単に紹介しておきます。映画を鑑賞する上で必要な前提知識ではありませんが、知っておくと楽しむポイントが増えるかもしれません。
- ローサー
- レイン王
- カドガー
- メディヴ
- ガローナ
アライアンス陣営の主人公格として活躍する人物。Lion of Azerothの二つ名で讃えられる最高の戦士です。ファーストネームはアンドゥインであり(Anduin Lothar)、ハースストーンのプリーストクラスヒーローである《アンドゥイン・リン / Anduin Wrynn》の名前はローサーの栄光をあやかって名付けられました。
映画の主人公の一人であり、アライアンス陣営を統率するストームウィンド王国の王。彼の息子が《ヴァリアン・リン / Varian Wrynn》であり、映画の中では当時10歳の子供の姿で登場します。《アンドゥイン・リン / Anduin Wrynn》にとっては祖父にあたり、Anduin "Llane" Wrynnのミドルネームを授かりました。偉大な王と軍神の名を受け継いだ少年がどうして泥棒を働く僧侶に成長したのかは誰にもわからないことです。
メイジクラスの追加ヒーロースキンとしてハースストーンにも登場している《カドガー / Khadgar》当人。映画ではまだ10代の若者であり、才能はありながら魔術士の総本山であるキリン・トアを離脱したならず者として若干の設定変更が行われています。若さゆえに軽率な言動が目立つ道化役の一面が映画では目につくものの、オークを制圧する強大な魔術士としての実力を備えています。
同じく追加ヒーロースキンの《メディヴ / Medivh》本人。ひとつの時代にたった一人しか存在しない守護者(Guardian of Tirisfal)と呼ばれるヒューマンのアークメイジです。Warcraft世界では最も重要な人物の一人であり、その死後も亡霊となってWarcraftⅢに登場し《スロール / Thrall》を導きました。原作ではガローナと恋仲になり息子をもうけますが、映画では残念ながらローサーに譲ることになります。
原作の「Warcraft: Orcs & Humans」では人間とオークの間に生まれたハーフ・オークとされていましたが、その後にドラエネイとオークのハーフとして設定変更された女性。メディヴとの関係性が変化したためか、映画ではさらに大幅な変更を受けています。
- デュロタン
- オーグリム
- グルダン
- ブラックハンド
フロストウルフ氏族を率いる族長。映画の中では明示されいませんがネタバレというほどでも無いので書きますと、《スロール / Thrall》の実父です。《グルダン / Gul'dan》の扱う邪悪な力に猜疑心を隠さず、公式サイトでも記されているように反旗を翻します。勇猛な戦士であり、そして同時に父として葛藤する彼の姿も映画の見どころでしょう。
Orgrim Doomhammerといえば誰もがピンと来るでしょう。《スロール / Thrall》に受け継がれた《ドゥームハンマー / Doomhammer》の持ち主です。そしてThe First War終結後にオーク種族がアゼロスで暮らすための基礎を築き上げた、ホードの最も偉大な人物でもあります。オーク種族の首都は彼の名前をとってOrgrimmarと名付けられました。デュロタンとは親友の間柄。
ハースストーンプレイヤーもよく知っているキャラクターの《グルダン / Gul'dan》。元々はシャドームーン氏族のシャーマンでしたが、悪魔の影響により変質しウォーロックにジョブチェンジしました。悪魔の力を借りたフェル(fel magic)という邪悪な魔術を用いてオーク種族を凶暴化させ、アゼロスへと侵略を開始します。
姓名はただ単にBlackhandと呼ばれる凶暴なオーク。《レンド・ブラックハンド / Rend Blackhand》は彼の息子です。原作ではThe Destroyerの異名で呼ばれる凶暴なだけで頭が悪いオークであり、《グルダン / Gul'dan》に便利に利用された挙句オーグリムにコロッと暗殺されたことになっていました。映画では若干の設定変更が行われており、凶暴性だけではなく戦士としてのしきたりを重んじる一面も描かれています。
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参照リンク
映画『ウォークラフト』の国内配給はTOHOシネマズ(東宝東和)の映画館で上映されています。最寄りの映画館は下記リンクより。
TOHOシネマズ-映画館情報
そして今回の映画はノベライズが行われ、日本語にも翻訳されています。
SBクリエイティブ - ウォークラフト
映画に登場する人物や背景についてさらに知りたいという方はHearthstone Expressさんの映画ガイドシリーズ記事にぜひ目を通してください。
公開直前! 映画「ウォークラフト」鑑賞ガイド #7: 感想・見どころ・あとがき [Hearthstone.exp]
Warcraftの世界観に興味が湧いたならひとくち新聞でお馴染みのりかぴさんの記事をオススメします。
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