昨日深夜にお馴染みVicious Syndicateの「vS Data Reaper Report #37」が公開されました。今回のデータは2月シーズン月初の1日から7日までの集計となり、新しいラダーシーズン開幕時の傾向が判りやすく反映された内容となっています。
vS Data Reaper Report #37 [Vicious Syndicate]
質より量をとるのがおおむね時間効率のよいラダーシステムの都合上、シーズン開始時は展開の早いデッキが人気を集めるのはお定まりのことです。
クラス毎の比率ではやはりShamanが全ランク帯を通じて30%を超える圧倒的な勢力を築いており、その内訳を覗くとMidrange Jade Shamanの人気がじりじりと高まり続けています。一方でRank5-1に対象を絞るとAggro Shamanの使用率は21.23%という高い比率を維持しており、いまだ現環境におけるベストデッキの地位を堅持していることが窺えます。
シーズン開幕時のReno MageとRenolockの僅かな落ち込みはさっさとランクを上げたいプレイヤー達に敬遠されてのことと考えられます。さてMiracle Rogueの不振はAggroの増加とControlの減少という二つの要因に引きずられてのことでしょうか。vS Reportにも書かれている通り、このデッキへの過大すぎるかもしれない期待と評価がそろそろひと心地ついた結果なのかもしれません。
このようなシーズン月初のメタにおいて、今回見られたJade Druidの増加は特筆すべき現象ではないでしょうか。vS Reportの分析ではこのデッキが増加した要因は不可解であると書かれています。好材料といえばMiracle Rogueの減少と展開の遅いShamanの増加ぐらいしか見受けられません。Rank5-1の間では先述の通り非常に高い比率でAggro Shamanがプレイされているにも関わらず、Jade Druidは着実にその数を増やしていたのです。
ある人はJade Druidの構築実験のためであると予想しており、Renoデッキに打ち砕かれたAggroプレイヤーによるカウンターピックと考える人もいます。わたし自身がTwitchで多くのプレイヤーの配信を観察していた限りでは、挑発/Tauntミニオンを数多く積み込んだディフェンシブな構築を見かける機会がやけに多かったように感じられました。
そこで今回の記事では、昨シーズン終盤に挑発/Tauntや低コストスペルによるAggro対策が顕著なJade DruidをプレイしていたKolentoのデッキへスポットを当てていきたいと思います。
アンチアグロ構成
Jade Druidの特徴は何と言っても《翡翠の偶像 / Jade Idol》が無限にカードリソースを供給し続ける点にあります。その低いマナコストと《ガジェッツァンの競売人 / Gadgetzan Auctioneer》のアビリティを組みあせたコンビネーションは非常に強力であり、とりわけControlデッキにとっては最も避けたいシチュエーションです。
いつの間にかJade Druidのデッキにおいてステープルな存在となった《ガジェッツァンの競売人 / Gadgetzan Auctioneer》でしたが、Kolentoはかなり早い時期からこのカードをデッキから抜いてしまいました。
他に目につくところでは序盤を凌ぐツールとなる2枚ずつの《生きている根 / Living Roots》・《自然の怒り / Wrath》・《妖獣の激昂 / Feral Rage》、そして6枚の挑発/Tauntミニオンです。この枠を確保するために《ガジェッツァンの競売人 / Gadgetzan Auctioneer》やJadeカードの雄叫び/Battlecryを倍加させる《ブラン・ブロンズビアード / Brann Bronzebeard》などグリーディなプレイを期待できるカードが抜かれているのです。
他にも《アルガスの守護者 / Defender of Argus》などディフェンシブなカードを試している内に、定番の《練気 / Innervate》すら切り捨て《サーベルのドルイド / Druid of the Saber》を1枚差す構成へシーズン終盤は落ち着いたようです。
参照リンク:
Kolento Jade Druid [Hearthpwn]
KOLENTO’S JADE DRUID (JANUARY 2017, SEASON 34) [TOP DECKS]
LIFECOACH’S JADE DRUID – HCT EU WINTER PLAYOFFS 2017 [TOP DECKS]
GEORGEC’S JADE DRUID – HCT EU WINTER PLAYOFFS 2017 [TOP DECKS]
TWOBIERS’ JADE DRUID – HCT EU WINTER PLAYOFFS 2017 [TOP DECKS]
Anti aggro strategy (jade druid)
◆ pros & cons
Kolentoのデッキ構成がアグレッシブなデッキを意識したものであることは一目で明らかでしょう。海賊団に対してはボードにアプローチする様々な手段で対処し、6枚の挑発/Tauntがゲーム終盤の侵攻を阻む壁となります。
現環境を支配するアグレッシブなデッキ達に対しては手札を潤沢に保つ《ガジェッツァンの競売人 / Gadgetzan Auctioneer》、またはカードバリューを倍増させる《ブラン・ブロンズビアード / Brann Bronzebeard》などは有効に機能しません。そもそもアグレッシブなデッキに対しては後半までのらりくらりと相手の攻めを捌くことができればごんぶとな挑発/Tauntでシャットアウトできるため、カードバリューを求める必要が無いのも自明のことです。
一方でこの構成は何度も指摘しているようにバリューゲームに強いカードを諦めています。《練気 / Innervate》の不在は一時的なマナブーストによるスイングターンというこのクラス特有の武器を捨てることにもなります。ただしそれであってもReno系デッキに対しては対等以上に戦うことが可能であり、《爪のドルイド / Druid of the Claw》は《レノ・ジャクソン / Reno Jackson》を手札に確保していないRenoデッキに対してプレッシャーを与えます。
コンクエスト形式のトーナメントに持ち込むべき構成とは思えませんが、ラダーにおいてはAggroとのマッチアップを改善することで勝率を高めていくことが期待できるでしょう。