1月シーズンも終盤に差し掛かり、あれだけ波乱を巻き起こしたガジェッツァン実装からすでに七週間が経過しました。前環境と比べてプレイヤーから支持されるデッキはお盆をひっくり返したように変化しており、その過程にはメジャーデッキとの戦いに敗れた様々なデッキアイデア達が死屍累々と横たわっています。
シーズンの中半はそうしたメタ圏外のデッキ達を見直すのに丁度いい時期だったのかもしれません。実際に著名なストリーマー達もレジェンドランクの順位を気にするには早すぎるためか、新環境で高く評価されてるとは言い難い様々なデッキにトライしていました。そうした著名配信者に感化された他のプレイヤー達も正体不明なデッキをラダーに持ち込み、メタに小さなうねりを起こすことも見慣れた光景です。
ラダーを回せばやれAggro Shaman、Pirate Warrior、Miracle Rogue、Renolock、Renomage、Dragon Priest、Jade Druid。代わり映えしないメンツにさすがに飽き飽きしてきたところではありませんか。今回の記事はメタゲームの外側でうごめく一風変わったデッキ達をチェックしていきます。
ちなみに、もしあなたがメジャーデッキをプレイすることに疲れて果てた時はNeviilzの配信を参考にするとよいでしょう。彼はプレイヤーとしての実力は確かなのですが、他人と同じようなゲームプレイを良しとせず常日頃からTier4デッキばかりを使って星を配る仕事に勤しんでいる人物です。彼の配信に映るゲームはあなたが見飽きてしまったような展開ではないことだけ保証できます。
https://www.twitch.tv/neviilz [Twitch]
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▼ Aviana Kun Combo Druid
▼ Buff Paladin
▼ Anyfin Paladin ft. Finja
▼ Secret Hunter
▼ Control Shaman
▼ Evolve Shaman
▼ Control Warrior
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Aviana Kun Combo Druid
ガジェッツァンで実装された新カード《忘却王クン / Kun the Forgotten King》は既存カードとの組み合わせによって非常にユニークな1ターンキルコンボ(OTK)を実現しました。このOTKコンボを中心に組み立てられたデッキはそのインパクトから大きな注目を集めたものの、メタゲームに影響を及ぼすほどの存在までには至りません。
されどこのデッキを用いてハイレジェンドへ到達したプレイヤーが示すように、環境を席巻するトップデッキに対しても勝率がそこまで悪いということもありません。そしてプレイングの面白さが一部のプレイヤー達を魅了し続けており、ラダーでも時おり見かける機会があります。
Trinity Series Day 1 - G2 vs Alliance, Tempo Storm vs Virtus.Pro
二つのバリエーション
この奇妙なコンボデッキにはバーストダメージを発生させるコンボとそこへ至るまでのゲームプランが異なる二つのバリエーションが存在します。そのひとつである《クトゥーン / C'Thun》とCultistミニオンをコアとする構築は旧環境のC'Thun Druidに似ており、ゲームを終盤まで繋ぐ手堅いミニオンが多数存在します。
もうひとつの《マリゴス / Malygos》をキーカードとするバージョンは旧環境のMalygos Druidに酷似した性格のものです。どちらもAggroデッキには挑発/Tauntが上手くはまらなければそのまま押し切られる弱みを持ち、その代わりに強力なコンボは多くのControlデッキに対して強力なカウンターとして機能することを期待されます。
◆ 参照リンク
Kun Aviana C'thun Combo Druid (55% Win Rate) In-Depth Guide [CompetitiveHS]
Combo Druid Double Guide (C’Thun & Malygos) [Hearthstone Players]
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Buff Paladin
不人気ブラザーズの兄貴分としてすっかり定着した感のあるPaladin。しかし先日のDeveloper Insight生放送では、開発チームの内部統計において勝率の面でBuff Paladinのデッキが唯一成功を見ていることが明かされました。
一口にBuff Paladinといってもデッキ速度が異なるバリエーションが存在するため、現環境に適したデッキがどのような構築スタイルなのかまだまだ研究の余地があります。参考にするとなれば、いまだにBuff Paladinを諦めていない著名プレイヤー達のデッキが良いサンプルとなるでしょう。
Made it to legend from rank 3 with paladin, posting refined decks here pic.twitter.com/6njj8BXgt8
— Alexander Malsh (@Kolento) 2017年1月7日
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Anyfin Paladin ft. Finja
新カード《飛刀手流忍者・六丸 / Finja, the Flying Star》のアビリティは重要なキーカードであるマーロック/Murlocミニオンをデッキから引き出すことができます。デッキの底に眠る《ブルーギル・ウォリアー / Bluegill Warrior》と《マーロックの戦隊長 / Murloc Warleader》を掘り出すことで《七つの鯛罪 / Anyfin Can Happen》のプレイがより早い段階から可能になると同時に、《マーロックの戦隊長 / Murloc Warleader》のアビリティによって一気に強力な盤面を作り出すことも脅威的なカードです。
前環境から差し替えられるカードは《超うざい調剤師 / Mistress of Mixtures》と《飛刀手流忍者・六丸 / Finja, the Flying Star》のみと変化が少なく、Pirate Warriorが若干苦しいことも相まって新環境ではプレイされる機会がほとんどありませんでした。そして年が明けて1月シーズン中半からは、SenfglasやMrYagutなど著名なプレイヤーの影響もあってかにわかに注目を集め始めています。
18日に始まったESL主催のチームリーグTrinity SeriesではG2所属のThijsがこのデッキを用いて6戦全勝を果たし、トーナメントにおけるこのデッキのポテンシャルを垣間見せてくれました。
Thijs Destroys Everyone At Hearthstone Trinity Series Tournament With A Murloc Paladin Deck
◆ 参照リンク
THIJS’ (G2) ANYFIN MURLOC PALADIN – TRINITY SERIES [TOP DECKS]
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Secret Hunter
カラザン環境で最もアグレッシブな構築のひとつであったSecret Hunterは、世間の海賊/Pirateブームにとり残されてしまいました。HunterはもはやAggroの代名詞ではないのでしょうか。
このクラスがメタゲームの中で立ち位置を見つけられない理由の一つには、自分より早いデッキとの対戦を宿命的に不得手としていることがあげられます。さらにMidrange HunterやSecret HunterはかつてControlデッキと対等以上に戦えたはずですが、《カザカス / Kazakus》を加えた現環境のReno系デッキに苦戦を強いられています。
この状況を覆せないままHunterの使用率は限りなくゼロに近づいていますが、一部にはいまだこのクラスを諦めていないプレイヤー達が残っています。Hunterアディクトとして知られるNickChipperと三度の飯より肉が好きな国内プレイヤーTansoku選手のSecret Hunterはこの逆風の中で高い勝率を叩き出していました。
◆ 参照リンク
Nickchipper's Top 100 Barnes Y'Shaarj Secret Hunter [TempoStorm]
Tansuko’s Secret Hunter [Vicious Syndicate]
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Control Shaman
範囲ダメージ(AoE)スペルと言えばMageやWarlockのイメージですが、いつの間にやらShamanはこの二つのクラスに匹敵するほど充実しています。ネックになるオーバーロード/Overloadは《溶岩の衝撃 / Lava Shock》で解決できるため、ボードクリアからの強力なミニオンドロップというマナ効率の良い戦い方がControl Shamanの特色と言えるでしょう。
デッキにはAoEのほとんど、またはコレクションに存在する全てが詰め込まれており、早い段階のミニオンプレッシャーを阻む《野獣の精霊 / Feral Spirit》、そしてゲーム中最も強力な除去スペルとしてお馴染みの《呪術 / Hex》も当然含まれています。
こうしたコントロール能力とヘルス回復手段を搭載したこのデッキは非常に粘り強く戦うことが可能であり、アグレッシブなデッキが溢れる現在のメタゲームにおいて最も尖ったControlデッキかもしれません。
Miracle RogueやJade Druidには苦戦を強いられるでしょうが、それ以上にAggro ShamanやPirate Warriorとマッチアップするならばこのデッキは推奨できます。
Hearthstone Deck Introduction: Control Shaman (Powered By G2A)
◆ 参照リンク
Deck Guide: Control Shaman (Anti-Aggro) [Good Gaming]
Wirer N'Zoth Shaman - GosuCup EU #1 - 1st place [GosuGamers]
(Top 10 EU Legend) Jade Control Shaman Guide [CompetitiveHS]
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Evolve Shaman
旧神拡張版のShaman専用カード《進化 / Evolve》は今回のガジェッツァン新カードのいくつかと相性が良く、実装前から特定のコンビネーションが期待されていました。ミニオンのアビリティが生成するTokenはマナコストが高く設定されており、特に《ドッペルギャングスター / Doppelgangster》は1体のミニオン召喚で合計15マナのミニオンを盤面に設置します。
この新カードと《進化 / Evolve》のコンビネーションはDruidやRogue、Aggro Shamanなど強力なAoEを持たないデッキにはとりわけ有効。デッキの構成はここでもJade系カードを軸に据えるかどうかでバリエーションが別れており、Shamanの新たなMidrangeスタイルとして研究の余地が残されています。
強力なAoEと回復能力を備えるReno系デッキとのマッチアップに難を抱えていますが、《レノ・ジャクソン / Reno Jackson》のスタンダード脱落まで今よりも評価を上げることができるか注目しておきましょう。
◆ 参照リンク
[LEGEND] Evolve Shaman (DETAILED GUIDE) [Hearthpwn]
[S33 LEGEND] EVOLVE JADE SHAMAN [Hearthpwn]
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Control Warrior
Pirate WarriorとDragon Warriorが高い人気を集める中で、前環境において最も支持されたControlデッキが影を潜めています。新カードをほとんど取り込めなかったControl Warriorはガジェッツァン実装時からほとんど忘れ去られたかのようでした。
再びこのデッキにスポットが当てられたのはNavi00tなどのControl Warriorを愛好するプレイヤー達の努力によるものです。ハイレジェンドへ到達した彼のデッキには《酸性沼ウーズ / Acidic Swamp Ooze》を見越して《ゴアハウル / Gorehowl》が二枚積まれており、新カードの挑発/Tauntミニオンを採用してラダーでマッチアップするデッキ達とのバランスを巧みに図っています。
12月シーズンレジェンド最終順位25位を記録したVLPSは、オープンカップに持ち込むアンチアグロ構成のデッキのひとつとしてControl Warriorを採用し優勝を果たしました。
Patches was no match for Elise, N’Zoth and Reno Jackson. Won the first NA 2017 HCT 512 man open cup! pic.twitter.com/eiUYzxHmC3
— Victor Lopez (@Tempo_Vlps) 2017年1月6日
◆ 参照リンク
Navi00t's Control Warrior [Twitter]
Fibonacci's N'Zoth Control Warrior [Twitter]