こりずに始める新シリーズ
どのように書いていったらいいものか勝手も判らず模索しながらとなりますが、記録として残しておくと後々面白いだろうと思うので挑戦してみます。
新たに始めるシリーズのテーマはいわゆる”Meta”について。
今後折にふれて記事にしていこうと目論んでおります。手始めに今回は、Play mode刷新によりランクラダーシステムが導入されたシーズン1&2の期間で区切り、大雑把にはなりますがRanked PlayやトーナメントのMetaを振り返っていきましょう。
『State of the metagame』シリーズ第一回目となりますので、本題に入る前にいま一度”Meta”とは何を指す言葉であるか書いておいたほうが良いでしょうね。
Meta game(メタゲーム)
カードゲームの文脈におけるメタとはMeta game(メタゲーム)を省略したものです。
TCG/CCGにおいてこの言葉が用いられる場合。
一般的には、流行している・または主流なデッキや戦術に対向するための戦略思考と駆け引きを意味します。
たとえばトーナメントのメタとは、情報収集を行い参戦者が持ち寄りそうなデッキを予測し、これへの対抗策を自分のデッキに含めること、または自分が展開する戦術へのカウンターに対するさらなるカウンターを用意すること・・・・等など、実際のゲームが始まる以前の戦略がMeta gameと呼ばれています。
ただこれには限らず、実際に戦いが始まった後もメタは存在します。
一例を挙げればBlizzcon2013やESGN Fight Night TVで採用されているBo5デッキエリミネーション方式。1戦目に勝利したプレイヤーは続く2戦目も使用デッキを継続、負けたプレイヤーは用意してきた残りふたつのデッキで戦います。
第一戦目ですでに、勝者側の手の内(デッキ)はおおかた曝されています。敗者側はこれに対抗し、勝者側は対抗されることを踏まえた上で再度同じデッキで戦います。マリガン(初期手札のreplace)には細心の注意が必要となるでしょう。
または、1戦目で見せていない隠し球がまだあるかもしれません。
この読み合いと駆け引きも”メタ”です。
また、メタとは目の前の勝ちを拾うことだけを指すものではなく、これを意識する人それぞれ異なる尺度があります。常勝であらんとすることは対戦ゲームではほぼ不可能ですし、トーナメントにおいてはその必要がないことも多々有ります。
リーグ形式で勝率トップに立てば良いのなら、勝率レースから脱落しそうな相手との戦いには負けても良いわけです。その戦いには2軍を当て、本当に勝たなければならない相手との対戦に備える、この長期的な戦略もメタです。
端的な言い方を連ねましたが、メタとは単純に定義付けられない多様な意味あいを含んでいるということですね。あらゆる場所にメタは潜んでいます。
そのためプレイヤー達は、それぞれ意図するところを言葉のflavor、なんとなくの雰囲気で包みこみ、この言葉を用いる文脈で通じあっているものです。
実際奥ゆかしい概念なので興味のある方は、TCGにおけるMeta game考察の第一人者であり、マジック・ザ・ギャザリングの生みの親Richard Garfield博士が発表したコラムの数々(Lost in the Shuffle)をあたってみてはいかがでしょうか。
すでに後悔し始めていますが、本稿でこれ以上掘り下げると収集つかなくなるので乱暴にまとめちゃいます。
Hearthstoneプレイヤー達が用いるMetaとは、メインストリームとなっている戦術へ対抗し勝率を高める方法論、または単純に”流行”そのものや、主流なデッキを指す場合もあります。
さらに日本人特有の、”メタる”なんていう動詞として用いる場合には”対抗する”という意味あいに偏っています。英語圏ではこの”メタる”ことを”Hate”と呼び表すそうですが、Hearthstone界隈ではほとんど見かけませんね。
面白いところでは、”メタを張る”なんて奇矯な言い回しもあります。
もひとつオマケに。流行りのデッキタイプの典型、または最も強いデッキ(何をもって強いとするのか知りませんが)を日本のTCGでは”トップメタ”と言われるそうです。
これに対応するものは、Hearthstoneの場合”Top Deck(s)”という表記がよく目につきます。
ゲーム中に重要な局面でキーカードを引いてくる俗語を”今引き”、またはトップデッキ(Top deck)とも言うので若干ややこしいですね。
ちょっと脱線しますが、今現在トーナメントレベルで採用されるTop Decksをチェックしたい場合は下記リンクのサイトがオススメです。
➥ Hearthstone Top Deck.com
Season 1 Recap
Too cold....
➥ 2013/12/11 Closed Beta 4217 Patch Notes
新たなRankedシステムが導入された12月11日のクローズドβパッチ4217。
Play modeの構築戦に氷河期が訪れていたこの日からLadderシーズン1が始まりました。
それまでランク評価システムは3-star masterで頭打ちとなり、余りにも大勢が到達していたため競争への意義を見失っていたプレイヤー達はこの変化を両手をもって歓迎しました。
しかし、その闘争心はものの1週間で凍りつくことになります。
BlizzCon2013の招待プレイヤー達がすでに完成させていた”Freezer Mage”によって。
Day[9] HearthStone Daily #2 - Delay Mage P1
いかに猛威を奮っていたものか当時を知らない人はこちらから。
➥ Top 4 Decklists 12/07/13 NA MLG/ManaGrind Tournament
➥ Top 4 Decklists 12/08/13 EU MLG/ManaGrind Tournament
クローズドβ初期から開催されているManaGrindトーナメント、NA・EUサーバーのトップ4デッキリスト全てが、FreezeメカニクスのSpellをキーカードとしたデッキ構成で埋め尽くされてしまいました。
Play modeもご多分に漏れずマッチングされる相手はMageばかりとなり、バーンデッキ(Spellを主要なダメージソースとする)スタイルへの有効な対策としてHoly Lightのような安いマナコストと多大な回復量のスペルカードが一躍流行することになります。
いろんな意味でお寒い状況が展開されたためか、プレイヤー達の動向を常にモニターしているBlizzardは急場の対策を迫られFreezeスペルのnerfパッチを打ち出しました。
➥ 2013/12/18 Closed Beta 4243 Patch Notes
Top Decks
このさなか注目を浴びていたのは、メタのうねりによって鍛え上げられた一振りの剣、Koyuki(Koyukizero)のコントロール・Paladinデッキ。
Fight Night Hearthstone - Koyuki vs Savjz - S03E03
彼がLegendへとのし上がったPaladin deckのガイド
➥ Liquidhearth: Koyuki's Control Paladin
ESGNトーナメントでも使用しているGiant ver.
➥ Liquidhearth: Koyuki's Control Paladin: Giants Edition
Legendランクへと駆け上がる彼の配信は大きな反響を呼び、ランク上位を目指すプレイヤー達をTwitchへ釘付けにしていました。
それまでアリーナ配信ばかりだったTwitchの人気動画はこの一ヶ月で、Ranked Play配信に塗り替えられてしまったのがとても印象に残っています。
Ranked Playのメタを考える上で、新たに導入されたLadderシステムの仕様上ひとつの興味深い戦略性を、Koyukiのような上位ランカーの動画からプレイヤー達は学びました。
すなわち、ランク帯ごとにメタの次元は様変わりするということです。
Play modeのマッチング条件を今一度おさらいしておきましょう。
Ranked Play MMR
Ranked Playの対戦マッチング条件はプレイヤーのランクにより変化する。
Rank 25: Angry ChickenからRank 1: Innkeeperまでは同一ランク、もしくは近しいランクのプレイヤーとマッチングされ対戦する。
対戦相手の所属ランクはプレイヤーネームに表示される
Legend Rankに到達するとMatch making Rating(MMR)が対戦マッチング条件として適用され、MMRの近似するプレイヤー同士がマッチングする。
対戦はLegendランクプレイヤー同士に限るわけではなく、 Innkeeper以下の相手ともマッチングされる。Legend RankプレイヤーにはStarが存在しない。
ex)
Legend RankプレイヤーがRank 1: Innkeeper以下のプレイヤーと対戦し勝利した場合
Rank 1以下プレイヤーはStarを失う
ex)
Legend RankプレイヤーがRank 1: Innkeeper以下のプレイヤーと対戦し敗北した場合
Rank 1以下プレイヤーはStarを得る
In Ranked Play, you'll be pitted against opponents equal to or as close to your rank as possible. You and your opponent's ranks will be visible to each other as you battle.
You'll continue to be matched against opponents of equal or close-to-equal skill in Legend rank using a hidden Matchmaking Rating (MMR).via : Closed Beta Patch Notes - 1.0.0.4217
Monte Carlo simulation of Hearthstone ranking
via : grigorin (Teamliquid forum)
download : Sim GUI
Play modeの解説記事はこちら
➥ The Way of the Legend
Season 2 Recap
Hate OTK
本来シーズン2は1月2日に開始されるはずでしたが思わぬバグにより遅延され9日からのスタート。31日まで実質3週間の短いレースとなりました。
当時TL monkサンの記したClass Powerランクがこちら
➥ Liquidhearth: HS Class Power Ranks-January 2014
12月のβパッチ4217によって定番の戦術であったBeast OTKを封じ込まれたHunterは最下位の評価。Aggro Hunterが台頭するまで実際目立つ存在ではありませんでしたね。
ありし日のUTH
さらにシーズン中の1月16日のβパッチにはMageのPyroblastとWarriorの専用ミニオンWarsong Commanderの大幅なnerf調整。
➥ 2014/1/16 Closed Beta 4458 Patch Notes
私が一所懸命書いたGiant OTKデッキガイドも一夜で無駄骨となり涙したものです。
➥ [Warrior] Giant OTK Control
シーズン2の目玉のひとつがOne turn killを良しとしないBlizzardの明確な指針でした。
カードのnerfばかりで若干の反発を覚えたのは事実ですが、今の環境を見ている中では正しい調整だったと感じています。まだまだ数多くの面白い戦い方が”OP”の烙印を押されたカード達の影に隠れていたからです。
しかし、そこで気になるのはこのカード。
Blizzardとプレイヤー双方から愛されるLeeroy Jenkinsの運命や如何に。
"LEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEROY JEEEEEEEEEEEEEENKINS!!!!" Remix
10時間耐久バージョン
Massive Aggro
略して、Maggro(嘘です)
シーズン1から2へかけて大きく存在感を誇示したのは何と言ってもAggroデッキの数々。
Hearthstoneの第一セオリーであるボードコントロールをまるで無視するかのような戦い方に、誰もが一度は面食らった経験があるでしょう。
対策は簡単とはいえRanked Playの仕様にフィットするためか、シーズン3の今に至るまでもメタの一角を占め続けています。
代表的なのはシーズン1にLegendを達成したKungenのBudget Aggro Hunter。
Leeroy Jenkinsが無ければArgent Commanderを代替としても差し支えありません。
➥ HSpwn: Kungen´s Legendary rank deck
WoWの有名人でリアルお金持ちのカチグミだそうですが詳しくは存じません。リッチマンな彼はHearthstoneに参戦するや大量のカードパックを大人買いしTwitchで配信を始めました。
初期はプレイングが伴わず「Kungenoob」の書き込みが途絶えることはありませんでしたが、そこはやはり数多くの固定視聴者を保ち続けるゲームセンスなのかどうか、瞬く間に頭角をあらわしレジェンドランカーのお手本の一人にまでのし上がることになります。
彼の名を冠したRogueデッキやDruidデッキを見かけたことが皆さんもあるんじゃないでしょうか。
このAggro Hunterは1月16日に実施されたUnleash the Houndsのマナコスト調整によってさらなる加速度を身につけRanked Playを一時期席巻するほどまでになりました。
➥ 2014/1/16 Closed Beta 4458 Patch Notes
一方で他のクラスにおいても強烈なAggro戦術の模索が進み、最も成功を収めたひとつがDKMRのLegend Paladin Aggro。こちらも同じく低レアリティカードがメインとなるので、オープンβから参戦したプレイヤー達に愛用されています。
➥ HSplayers: DKMR’s Legendary Deck Guide: Paladin Aggro
Power Hero
Play modeの混沌をよそに、トーナメントにおいて上位を占めるクラスの顔ぶれは、あまり変化が見受けられませんでした。とりわけ格別の安定感に支えられたDruidは、(Arena mode以外で)第一の評価を受けるに至ります。
➥ Liquidhearth: HS Class Power Ranks-February 2014
Choose oneキーワード能力はその性質上、他のクラスの専用カードよりも性能が劣りますが、その代わりとして多様なシチュエーションに対処できる汎用性を武器とします。
それに加え、InnervateからのカードコンボでChillwind Yetiを召喚するような相手の序盤ミニオンを圧倒する戦術もやはり強力。
Malfurion Stormrageと対峙する時、相手の底を探るのに失敗すれば、いつの間にか懐に飲まれていることでしょう。実の弟(Illidan Stormrage)を地下牢に閉じ込めたまま1万年?ぐらいグースカ眠ってただけあってスケールが規格外にデカいHeroです。
といったところで、Season 1&2の期間に区切って構築戦の情勢をざっくりと振り返ってみるState of the metagame第一回はこれにて終了。
あまりにもはしょりすぎて突っ込みたくなるお気持ちも判りますが、たった2ヶ月間とはいえ克明に記そうとするとスペース(と私の時間も)がまったく足りませんのでご容赦を。
今後はもうちょっとまともに書けるように精進していきたいと思います。