マグロではない。
TCG(トレーディングカードゲーム)の世界では、カードデッキの性格を表すさまざまな用語が頻繁に用いられます。
前回のデッキアナライズで『ビートダウン』というカードデッキビルドの性質についてすこし触れました。今回はその類似型である『Aggro(アグロ)』がテーマとなります。
前回の記事 : ビートダウン・ザ・サツバツ・アリーナ
アグロ
前置きですが、こうしたカードデッキ用語の定義とは実際あいまいなものです。
本稿で述べる『アグロ』についても、MTG他さまざまなTCGプレイヤーがその概念を始まったばかりの「ハースストーン」へ持ち込み、自前で組んだカードデッキの性質や志向する戦略を述べるにあたって便宜的に用いているものです。
他のTCGに目を向ければ、ゲームによっては速攻戦術を単純にアグロと分類したり、自分がイニシアティブをとって攻め続けるカードデッキビルドの総称をアグロと呼んだりもしています。
それぞれの分野のTCG経験者からすると違和感あるかもしれませんが、今のところ皆、感覚的に使ってるだけなのでご了承ください。
似てるけど違う
ちょっと涙ぐんだ思い出。でもアグロ違い
用語の定義についてはさておいて、ハースストーンコミュニティでいま現在よく使われている『アグロ』戦術のカードデッキとは以下のような特徴を備えています。
より早く短期間にできる限り多くの損害を与える
手札から切るカードは可能な限り相手へのダメージに変換する
Aggro = ”Aggressive Deck”という解釈でも良いでしょう。スタークラフトのようなRTSにあてはめれば、ラッシュビルドオーダーに似た代物と考えれば理解しやすいと思います。
素早く攻めることで主導権を握り、相手がラッシュに対応できなければ攻め切ってゲームを終わらせてしまう。ただし、後半戦にもつれ込めばカード不足(資源不足)に陥るという共通点があります。
前置きが長くなりました。今回のデッキアナライズはクローズドβプレイヤー達のお気に入りだったユーモラスなアグロビルド、Army of Murlocsのゲームを分析していきましょう。
Army of Murlocs
今回の主役達
カエルみたいな何かです。たぶん。見たとおりですが、彼らの戦力を侮ってはいけません。
ハースストーンに登場するクリーチャー・カード、「ミニオン」にはRace(種族)という概念が存在します。彼らMurlocはその種族設定のうちのひとつです。
【重点】すべてのミニオンにRaceが設定されているわけではない。Race設定ミニオンは全279体中100体のみ
Race設定は各種族それぞれ異なる特徴を持っており、他の種族とは相関関係にありません。
Beast種族はPirate種族と仲が悪い、とかDemonはTotemに強いとかそういった作用は存在しないのです。
詳しい解説はまた別の機会として、Murlocsの際立った種族特性について。
一言でいえば”Murlocs同士の親和性が極めて高い”です。
一例。
上記2体のアビリティはフレンドリーミニオンのアタック値強化ですが、違いが幾つかあります。
Raid Leaderはフレンドリーミニオン全てにアタック1を付与
Grimscale Oracleはすべてのマーロック種族にアタック1を付与
後者はマーロック種族に対してのみbuffを与える能力です。ただし、他のマーロックスと組み合わせれば相乗効果(シナジー)が発生します。
Old Murk-Eye:チャージ/バトルフィールド上のMurloc種族1体につきアタック1上昇
Murloc Tidecaller:Murloc種族がフィールドに召喚される時、アタック1増加
仮にGrimscale Oracle・Murloc Warleader・Coldlight Seerの3体がバトルフィールドに揃えばマーロック種族限定でアタック3/ヘルス3のbuffとなります。
(other Murlocsの但し書きに注意)
Old Murk-Eyeがフィールドに居ればシナジーによりアタック値上昇は+6、マーロックス4体のアタック値合計は20。所要マナはたったの11。
最短5ターン目(The Coinがあれば4ターン)にこの4体だけで致命的なダメージ量です。
もちろん実際のゲームでは邪魔が入るのでそう都合良く達成はできません。が、対戦相手が適切なカットを行うことが出来なかったらどうなるか、ご覧ください。
クラス共通ビルドと相性
マーロックアグロの特徴を5点挙げます。
- マナが安い
- 種族限定シナジーが豊富
- クラス共通ビルドである
- それぞれのヘルス値は低いのでカットされやすい
- ミラーデッキとすこぶる相性が悪い
全クラス共通
このマーロックデッキの美点は共通ビルドであること。
Murloc種族は全クラス制限なく使えるカードなので向き不向きはあるにせよ、どのクラスでもマーロックアグロを組み立てることが可能です。
また、マーロック種族のカードはコモンレアリティが半分、レアが3枚、エピックが1枚と揃えやすく、レジェンダリーのOld Murk-Eyeはクエストで入手できます。
Bloodlust :シャーマン専用スペル。
ミニオンの数が多いほど効果的なスペルと単価の安いマーロックスの相性は抜群
Divine Favor :Paladin専用スペル。
手札枚数でディスアドバンテージに陥るマーロックデッキの弱点を補う
ウィークポイント
そして弱点、カットされやすいとはつまり、戦略のキーとなるミニオンを簡単に除去されてしまうということです。
Explosive Trap :ハンター専用スペル。
たった2マナでラッシュの出鼻を挫く
Arcane Explosion :メイジ専用スペル。
個々のヘルスが低いマーロックはAoE(Area of Effect)に対して脆弱
ミラーデッキ
このマーロックデッキを使う上での最大の注意点。
先に挙げた2枚のカードの違いをもう一度よく見てみましょう。
Raid Leaderはフレンドリーミニオン全てにアタック1を付与
Grimscale Oracleはマーロック種族限定でアタック1を付与
原文テキストは
Raid Leader :Your other minions have +1 Attack.
Grimscale Oracle :ALL other Murlocs have +1 Attack.
Hearthstoneに登場するカードはテキストに書かれた内容通りの働きをします。
Grimscale Oracleのbuff効果はすべてのマーロック種族、つまり対戦相手のミニオンにマーロックが居たらアタック1の強化を与えてしまうということです。
これを踏まえて、同一タイプのデッキ構成による対戦、ミラーデッキとなった場合どれだけタフな状況に追い詰められるか要チェック。
動画は著名ゲームメディアForce Strategy GamingのYoutubeより。
ミニオンを召喚したい、でもフィールドに出したら相手を強化してしまう、インガオホー。
最後に、マーロックデッキは必ずしもマーロックで埋め尽くす必要はありません。
マーロックの低コストとクラスごとの専用カードを組み合わせたハイブリッドアグロなど、アイデア次第でさまざまなバリエーションが生まれます。
といったところでまた次回。下記のオススメデッキも要チェック。
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